【書評】空腹について(雑賀恵子)|空腹に振り回される人間について

『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎は空腹を満たすときつかのまの幸福を得る。同じくグルメ漫画の『忘却のサチコ』の主人公、佐々木幸子は空腹を満たすとき、結婚式当日に自分のもとを去った婚約者、俊悟さんのことを忘れることができる。 『ドラゴンボー…

【書感】性食考(赤坂憲雄 著)|内容紹介・感想とゾンビの考察

食と性は奇妙につながる。 たとえば「食べる」という言葉には、2つの意味が存在する。1つは「パンを食べる」といった、文字通りの食べるという意味。もう1つは「性交する」という意味だ。たとえば「あの娘を食べたい」「あの人はこのサークルの男を食い散ら…

『食の社会学 パラドクスから考える』の書評と、食における人間の加害性について

ブラック労働に支えられている高級レストランの料理。食料の過剰と不足が同時に起こる社会。地球環境に配慮したオーガニックフードを作るために、重労働に強いられている人たち。 われわれ普段何気なくしている食には、数々の矛盾した側面が存在している。 3…

【要約】マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう』|正義とは何か?3つのアプローチから考える一冊

自分の家族が凶悪な犯罪に手を染めていた場合、通報するべきか、それとも目をつむるべきか。 第二次大戦中の非人道的的行為に対して、現代世代はその責任を負う義務があるのか。 人口妊娠中絶や同性婚は認められるべきか。 どう判断するのが正義なのだろうか…

【書評】『エコ・ロゴス―存在と食について』(雑賀恵子 著)

『エコ・ロゴス―存在と食について(雑賀恵子)』とはいったい何なのか? タイトルからではまったく内容が想像できないが、ものすごく簡単にいえば、生命の循環から、人間の命、いまここにるわたしの命、その在り方を考えるエッセイだ。 あくまでエッセイとい…

リニューアル後の宮下パークで感じた肯定的感情と否定的感情

渋谷の宮下パークがオープンした。 宮下パークとは東京都渋谷区にある、複合商業施設のことだ。以前は宮下公園があった土地が、渋谷の再開発計画とともにリニューアル。 宮下パークは3階建てで、ブランドショップや飲食店が入った商業施設と、その屋上に宮下…

食糧問題解決のため「食の利他主義」とは?|『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか (ジャック・アタリ著)』より

2050年、人類は食えなくなるかもしれない。この悲観的な主張をするのが、欧州最高峰の知性と呼ばれるジャック・アタリだ。彼は『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか』のなかで次のように主張している。 今日の西側諸国と同じ消費モデルを持してより…

日本人はなぜ最近まで牛乳・乳製品を食べなかったのか?

チーズやヨーグルト、バター、そして牛乳。乳製品は現在の日本の食卓には欠かせないものになっている。 しかし日本人が日常的に牛乳を飲み、乳製品を食べる最近になってからだ。また日本の伝統料理を振り返ると、乳製品を使った料理、菓子は皆無だ。(創作系…

閉鎖的な村と食人を生々しく描く漫画『ガンニバル(二宮正明)』の感想

ド田舎の超閉鎖的な村で、人知れず、人が人が食うという、ホラー要素満載のワクワクする漫画。それが『ガンニバル』である。 ガンニバル 1作者:二宮正明日本文芸社Amazon 『約束のネバーランド』『鬼滅の刃』『東京喰種』『進撃の巨人』など、近年ヒットした…

肉・牛乳・米の礼賛と忌避を繰り返す日本人|『カリスマフード: 肉・乳・米と日本人(畑中三応子)』書評

「肉を食うと穢(けが)れる」と、肉を忌避する一方で「肉は健康にもよく、体格がよくなる」と礼賛する。 「牛乳を飲むと骨からカルシウムが溶け出す」というトンデモ言説が存在する一方で、「牛乳は完全栄養食である」という過剰な礼賛が存在する。 「日本…

ポテトチップスの袋がうるさいのはなぜか?|『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実(チャールズスペンス)』の書評

なぜポテトチップスの袋はうるさいのか? あんなにもガサガサ音がする袋なのだろか? 実は、袋の音が大きければ大きいほど、ポテトチップスがサクサクしているように感じられるからだそうだ。 オックスフォード大学の学生のアマンダ・ウォンと行った研究を通…

『チーズと文明(ポール・キンステッド)』の書評|チーズの歴史を世界史の中で読み解く一冊

日本でチーズを一般的に食べるようになったのは昭和になってからだ。チーズを食べるようになって日本人はまだ100年もたっていない。 当然、日本の伝統料理にチーズは登場しない。 一方で、ヨーロッパ、近東において、チーズは欠くことができない重要な食物で…

ポストモダンの人間が動物化したとはどういうことか?|『動物化するポストモダン(東浩紀)』の書評

批評家であり哲学者である東浩紀の著書、『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』を読んだ。 『動物化するポストモダン』はポストモダンの、オタクたちの消費行動の変化を論じたうえで、それらの消費行動の変化は、社会に対してどのような影響を…

【書評】『食べることの哲学(檜垣立哉)』|人間は動物を殺し、毒を食って生きる|

食べることとは、動物、植物を殺すことだ。殺すことはネガティブなものであるが、われわれ人間が生きるためは、そのネガティブなことをし続けなければいけない。 この食べることに関する矛盾を掘り下げてくれるのが、「食べることの哲学」だ。 本書の著者は…

解体間近の「渋谷桜丘町」の街並み(2018年12月撮影)

たまたま撮りためていた写真があったのでブログで公開することにしました。解体工事が進む前の渋谷桜丘の様子です。 桜丘町の再開発対象地域は、2018年12月現在、お店がすべて閉店。現在は建設の真っ最中で、以前の桜丘は跡形もなくなっています。 ※開発計画…