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身近に存在するカニバリズム|みんなカニバリズムで大人になる

人間における最大のタブーといえばカニバリズム、すなわち人間を食べることだ。死んだ人間であっても無論、たとえ餓死の危機に瀕しているとしても、現代においてカニバリズムは絶対に許されない行為ということになっている。

一方で実は、多くの人間がカニバリズムを経験済みだといえるのではないだろうか。タイトルからもうお気づきだと思うが、母乳を飲むという行為によってある種のカニバリズムを経験しているのではないか、ということだ。

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母乳を飲むこととカニバリズム

カニバリズムの意味は、デジタル大辞泉によると「人を食うこと。特に、呪術的信仰から、また宗教儀礼として人肉を食う慣習。」となっている。

狭義では、宗教や呪術的なもの人食をとくにカニバリズムというようだが、本記事では広義の意味の「人を食うこと」としてカニバリズムという言葉を使用する。

カニバリズムでまずイメージするのは、人間の肉を食うことだ。そのイメージからすれば、母乳を飲む行為はカニバリズムとはいえないし、肉と乳は成分的にも文化的意味合いにおいても、まったくの別物だ。

一方で母乳は、つまり人間の乳は、筋肉し脂肪と同じく食べたものからできている。人間は食べたものを体内で消化し、栄養素を抽出し、そこから筋肉や脂肪、脳や内蔵、血液をつくりだす。乳は血液からつくられる。

乳は肉と同じ過程で体内で作られるものであり、その意味では、人間の乳を飲む行為は、人間の肉や内蔵を食べる行為とほぼ同じといえるのではないだろうか。

つまり母乳を飲む行為もある意味カニバリズムと考えることができ、そして母乳で育ったすべての人が、カニバリズムを経験済みだといえる。

今では母乳ではなく、人工的に作られたミルクで子供を育てることは可能だが、人工的なミルクであっても、それは人間の乳を模したものである限り、やはり人間が体内で作りだす乳が必要なのだ。

牛乳(牛の乳)であっても飲ませるのは1歳になってからが推奨されているし、生まれたての子どもに、栄養満点だからといってサプリメントを食べさせることはできない。

つまり「人間は、最大タブーの1つであるカニバリズムを経ることでしか成長できない」といえるのではないだろうか。

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母乳を飲む行為は近親相姦的でもある

母乳を飲むという行為はカニバリズムであるばかりか、近親相姦であるともいえるのではないだろうか。

母乳は乳房から出てくる。そして乳房は性を象徴するパーツの1つである。母親の性の象徴パーツである乳房を、口でくわえる行為は、見方によっては近親相姦的であるといえないだろうか。というのも母親の乳房をくわえるという行為は、幼少期だから許されるのであり、ある程度の年齢の子なら、おそらく近親相姦のタブーに触れる行為として捉えられてしまうのだから。

多くの人間が経験する「母乳を飲む」という行為は、カニバリズムでもあり、また近親相姦でもあるといえる。多くの文化において最大のタブーであるカニバリズムと近親相姦、この2つを多くの人間は生まれて間もない頃に経験しているといえるのではないだろうか。

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カニバリズムと近親相姦によって、人は徐々に他者を受け入れる

人間は生まれながらにして、最大のダブーを経験している。しかし人間はこの矛盾を経なければ大人になれない(現在では科学の力で母親が不在でも大人になれるかもしれないが、それにしても代理の母親や、母乳の代わりになるものが必要であることは間違いないだろう)。

生まればかりの子どもは免疫がないため、牛の乳や肉を食べることはできない。完全なる他者を、いきなり受け入れることはできない。

また生まれたばかりのときは母親以外の他者を信用できず、人見知りをする。生まれてまもない頃は母親にべったりだ。

生まれたばかりの子どもは、最初はもっとも近い他者である母親の一部を食し、交わる。まずは最も近い他者から慣れていく。そして母乳から離乳食へ、離乳食から動物の肉へといったように、徐々に母親との距離を隔ていき、他者を受け入れるようになっていく。

母乳を飲む行為と人間社会のタブーは矛盾しあっているかもしれない。それでも近親相姦やカニバリズムにタブーになっているのは、人間のほぼすべてが経験済みであり、油断すると幼少に戻り、そのタブーを犯してしまう恐れがどこかにあったからではないだろうか。だからこそ直感的に忌避するほどに、カニバリズムと近親相姦を厳格なタブーに位置づけたのではないだろか。

※このような性と食のつながりについては、赤坂憲雄氏の著書『性食考』が非常に示唆に富んでいる。本記事も『性食考』から受けたインスピレーションをもとに執筆している。

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