大戸屋ごはん処、通称「大戸屋」の人気商品である「チキンかあさん煮定食」を食べてみました。
値段は950円(税込)でカロリーは914kcalです。単品での注文もできます。
それにしてもユニークな商品名です。「チキンかあさん煮定」というチキンを煮た食べ物であることはわかるのですが、味付けについては全然想像ができない商品名なのです。和食をコンセプトにしたレストランなので、概ね和風の味付けであることはわかります。しかし具体的な味はわかりません。
また「かあさん煮」という不思議な文言が入っているのも気になります。これはもちろんかあさんを煮ているのではなく、かあさんが煮ているようなという意味です。おふくろの味のような、温かみのあるイメージを想起させる目的でつけられていると思われるのですが、具体的な味付けを商品名に入れず「かあさん」という肩書を入れるあたりには驚かされます。
それにしてもいったいどんな料理でどんな味なのでしょうか。
簡単にいえば、チキンカツを煮込んだものです。
土鍋の中にはチキンカツ、たっぷりの大根おろし、にんじん、ほうれん草、れんこんといった野菜が入っています。ではこれらの具材は何に漬け込まれて、そして煮込まれているのでしょうか。つまり何味なのでしょうか。
このタレについては、実は公式サイトでは「特製ダレ」としか記載がされていません。醤油がベースなのか、味噌ベースなのか、そういったことは一切書かれておらず、ただ「特製ダレ」としか書かれていないのです。これでは味を予測することができず、注文しづらいです。
しかし勇気を振り絞って注文して食べてみると、たしかに特製ダレとしか表現のしようがないタレであることがわかります。
実際に食べてみると、味噌煮込みのタレとも違いますし、親子丼やカツ丼とも違います。酒やみりん、醤油などを使った和食のタレであることはわかるのですが、他にも何かが使われているような気がするし、しない気もする、そんななんとも形容しがたいタレを使った煮込み料理、それが「チキンかあさん煮」の正体なのです。
そしてこのなんともいない特製ダレからは、不思議とかあさんの存在を感じてしまいます。料理に慣れたかあさんが、長年の料理経験から培った勘だけを頼りに、手元にある調味料をバババッと混ぜて作ったような、そんな感じがしてしまうからです。大雑把なんだけど、繊細さもあってたしかに美味しい。そんな温かみがあるのです。
「チキンかあさん煮」という商品名に、最初は反発を覚えました。それはジェンダーロール云々ではなく、商品名から味が全然予想できないからです。しかし実際に食べてみると「かあさん煮」という表現がしっくりくることがわかりました。醤油でも味噌でもない、かあさんが作りそうな味なのです。そして大戸屋ごはん処は「かあさん」の味という非常に曖昧なものをうまく表現しました。そのアイディアや技術力には、感嘆せざるをえません。