「バターチキンカレーって、どこでも食べても同じような気がする」
バターチキンカレーがあるような街のインド・ネパール料理屋の多くは、チェーン店ではないので「どこでも食べても同じ」ということはないはずです。しかし食べる頻度が数ヶ月に一度程度なので、どこのバターチキンカレーも同じような味だと感じていました。店の内装やメニューの構成、店の名前も似たりよったりなので、実は「同じオーナーが何店舗も運営しているのでは?」と思ったりもしていました。
実際どうなのでしょうか?
バターチキンカレーは店ごとに違うのでしょうか?
違いがあるとしたら、どこがどのように違うのでしょうか?
それを探るべく、短期間のうちに10軒の店でバターチキンカレーを食べてみることにしました。
「10軒程度食べ比べたくらいでバターチキンカレーの何がわかるんだ」という意見もあるとは思いますが、10軒程度でも、店ごとに違っていることがわかるレベルで、各店のバターチキンカレーは違っていました。ひとまず紹介できればと思います。
今回食べたバターチキンカレーの一覧
まず今回私が食べたバターチキンカレーの一覧です。
店名 | 画像 |
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・Rumi(高円寺) 高円寺にある中東&オリジナルインド料理レストラン。ビリヤニなどもある店。バターチキンカレーは若干パクチーの風味があったり、人参やジャガイモなどの根菜の甘みがあったりして、けっこう独特。 |
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・ミラン(東高円寺) 東高円寺駅すぐにインド・ネパール料理屋。マイルドでクリーミーで、とても食べやすいバターチキンカレー。チキンは、モモをぶつぎりにしたものが4個くらい入っていて、チキンもたっぷり楽しめる。 |
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・ニュー高円寺インディア(高円寺) 高円寺駅から徒歩3分ほどの場所にあるインド・ネパール料理屋。ディナーはタイ料理などもある様子。 バターチキンカレーは、ミルキーでマイルドな味がある一方で、その奥にしっかりスパイスの存在を感じられる。またどろっとしたペースト状の質感のなかに、砕いたスパイスや刻んだ玉ねぎでしょうか、色々とつぶつぶとしたものが入っており、食べごたえがある。 |
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・ケララバワン(練馬駅) 練馬駅から徒歩3分ほどの場所にある南インド料理屋。マサラドーサ、ビリヤニなど本格南インド料理が楽しめるお店。バターチキンカレーは他は大きく違っていて、スパイスとトマトの味をしっかり感じられる。ミルキーさはないが、スパイス感、トマトの旨味はこちらがもっともよく感じられる。
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・野方キッチン(野方) 西武新宿線・野方駅にあるインド・ネパール料理屋。よくあるインネパ系レストラン。バターカレーがアツアツでいい感じ。ここまでしっかりアツアツなのは珍しい。チキンはモモではなくムネを使っているようす。 |
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・アジアンレストランアティティ(中野) 中野のマルイの中にあるインド・ネパール料理屋。商業施設にあるお店。タイ料理なども提供している。かなりマイルドな味付け。ミルキーで、ねっとりしている。 |
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・ターリー屋(中野) 都内に30店舗以上あるナンとカレーの一代チェーン店。ケバブライスなど独自のメニューも提供している。バターチキンカレーはほどよくコクがあり、クリーミーさもある。カレーは少なめ。肉もちょっと少なめではあが、昼も夜も同じ価格でカレーとナンが食べられる。 |
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・アジアンスター(中野) 中野駅の商店街にあるお店。タイ料理も提供しているインドネパールアジアン料理屋。よくあるバターチキンカレーといった感じで普通に美味しい。カレーやややぬるかったのが気になった。 |
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・アイキッチン(都立家政) 西武新宿線・都立家政駅からすぐの場所にあるインド・ネパール料理屋。ホスピタリティあふれるお店。よくあるバターチキンカレーだが肉がたっぷりはいっているのが嬉しい。 |
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・カレー&居酒屋 ニコニコ(中野) 中野駅から徒歩5分ほどの場所にある、インドネパール料理屋。居酒屋という言葉を使った珍しい店名のお店。実際はよくあるインネパ系レストラン。ほどよくトマトの風味を感じられる。全体的にはとても食べやすいマイルドなバターチキンカレー。 |
すでに写真でも店ごとに違っていることがわかると思いますが、詳しくは後ほど。
それにしても都内のインド・ネパール料理屋の数には、本当に驚かされました。今回は、私の活動エリアである中野区と杉並区の店を主に訪問したのですが、簡単に10軒見つけられました。中野駅、高円寺駅は徒歩圏内にナンとカレーの店が4、5軒あったりします。NHKの記事によればいわゆるインド料理は全国に2000軒以上あるそうです(なぜ急増「街中のインド料理店」見えてきたものは- NHK)。スターバックスの店舗数が約1800なので、それを上回ります。
さてそれでは、私が感じた、バターチキンカレーの店ごとの違いについて紹介します。
10軒のバターチキンカレーを食べ比べた感想
結論:店によって全然違う
・トマトの存在感
バターチキンカレーにはトマトが使われたりしなかったりするそうなのですが、お店によってトマトの酸味や甘味を思い切り感じられるものがあったり、トマト感ゼロのものもありました。もっともトマトの味を感じられたのは、練馬の南インド料理屋ケララバワンのバターチキンカレーです。はっきりとトマトの味を感じました。
・質感の違い、どろどろしている店もあれば、ややシャバットしている店もある
基本的にはドロドロしてはいるのですが、そのドロドロ具合に意外と違います。何かのペーストのようにドロドロしている店もあれば、ややシャバシャバしたものもありました。
・舌ざわりというか食感の違い
前述の質感の違いに近い要素です。基本的にはクリームのような、ペーストのようななめらかな舌ざわりなのですが、時々、カレーの中に細かく刻んだスパイスなのか、玉ねぎなのかわかりませんが、食材の食感が残っているものがありました。これはこれで歯ごたえがあり、楽しさを感じました。
・スパイスの香りの強さの違い
使うスパイスの種類や量がおそらく違っているのだと思いますが、店ごとに香り、濃さが全然違います。全然スパイスの香りがないものもあれば、「しっかりスパイスがいるな」と感じるものもありました。個人的に好きなのは練馬のケララバワンです。
・マイルドさの違い
ミルキーさの違いというか、乳製品のコクの違いというのでしょうか。表現しにくいですが、マイルドさに違いがありました。思いきりクリーミーなものもあれば、クリーミーさをほぼ感じないものもありました。
・表面の模様の違い
先の写真の羅列でもおわかりいただけると思いますが、店によって表面の模様が違います。基本的には円を描くタイプが多いようですが、模様を描く店もありました。表面の白がない店も。
ちなみに表面の白いのは生クリームだったり、コーヒーフレッシュだったりするそうです。
・色の違い
先の一覧写真でもおわかりの通り、お店によって色がぜんぜん違います。オレンジに近いものもあれば、赤っぽいものもあります。使用するスパイスの違いによるものだと思います。
・鶏肉の数、大きさ、部位
基本的には一口で食べられるくらいのサイズですが、二口で食べられる大きさの、ちょっと大きい鶏肉が入っているものがありました。部位は店によってまちまちで、モモだったり胸だったり様々でした。
・量の違い
バターチキンカレーとナンのセットは概ね900円~1000円くらいなのです。しかしナンが1枚では足りないくらいたっぷりカレーが入っている店や、ナン半分くらいでカレーがなくなってしまう店がありました。できればたっぷりほしいものです。
・温度の違い
舌がやけどするくらいあつあつのカレーを出してくれる店もあれば、ほんのり温かく、すぐに冷めてしまう店もありました。
・器の違い
以下にもインド料理っぽいシルバーで、取ってがついたものを多数みかけました。雰囲気のある木のお椀もありました。
まとめ
以上のようにバターチキンカレーは、あらゆる点で違いがありました。非常によく似ているものはありましたが「まったく同じ」と思うようなものはありませんでした。
おそらくベースのレシピのようなものは存在するのだと思います。そのベースのレシピに、シェフのこだわりや、利率、利用できる材料などの要素が加わり、一見似ているけどよく見ると全然違う、各店のバターチキンカレーが誕生しているのではないかと思います。
ちなみに今回訪問した中でもっとも際立った違いがあったのが、練馬の南インド料理屋「ケララバワン」のバターチキンカレーでした。南インド料理屋は基本的にバターチキンカレーがないといわれていますが、こちらのお店は置いていました。しかしそのバターチキンカレーは他とは違い、トマトの味、スパイスの香りがはっきりしており、クリーミーさを抑えた、唯一無二といえるものでした。
日本にあるインド・ネパール料理屋のほとんどは、ネパール人が運営しているそうです。一方で練馬のケララバワンはインド人が運営、南インドのシェフが在籍している店だそうです。だからなのか、何か強いこだわりというか、プライドのようなものを感じられる、バターチキンカレーでした。ぜひおすすめしたいです。
付録:ナンの比較
ご飯よりナン派なので、毎回ナンを食べたのですが、こちらも店ごとに違っていました。
具体的には
- 面積
- 厚み
- オイル(ギーがあるかどうか)
- 硬さ
- 甘さ
- 塩気
これらの点に違いが見られました。
おそらくナンについても、ベースのレシピがあり、そこにシェフのこだわりやコストなどの要素が加わって、似ているけどよく見ると違うといった、各店のナンができているのだと思います。