読書感想– category –
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フランス菓子の歴史と命名法がわかる一冊『名前が語るお菓子の歴史』|私たちは100年以上も前に考案された価値を食べ続けている
日本でも人気の焼き菓子である「フィナンシェ」。実は「フィナンシェ」という言葉は「金融家」を意味する。焼き菓子なのになぜ金融家なのか。実は、パリの証券取引所の近くで店を開いた菓子職人ラヌが、フィナンシェ(金融家)たちが、背広を汚さずに手... -
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【書評】新しい目の旅立ち(プラープダー・ユン)|汎神論とスピノザの哲学と自然に特別な意味を見出す思想
「環境保護は重要である」 私たちはこの考えを何の疑いもなく支持している。しかしその考えが実は、豊かな国に住むある程度裕福な人間がもつ、身勝手な考えにすぎないのだとしたら……。 そんなスリリングな主張をするが『新しい目の旅立ち』という一... -
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サードプレイスとは何か?|レイ・オルデンバーグ『サードプレイスーコミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』の書評とサードプレイスの特徴など
ここ最近スターバックスが増えることについて少し違和感があり、スターバックスについて調べているのだが、その過程で必ず目にするのが「サードプレイス」という言葉だ。 「スターバックスの人気の秘密はサードプレイスを提供したことにある」と説明される... -
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スターバックスを批判的に考察する数少ない著書『お望みなのはコーヒーですか?(ブライアン・サイモン)』内容紹介と書評
『お望みなのはコーヒーですか?』は、日本語化されている本のなかでは数少ないスターバックスを批判的に論じた本である。 しかもその内容は「意識高い系が嫌い」や「気取った雰囲気が嫌い」といった感情的な批判ではなく、取材と文献にもとづいた社会学的... -
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【書評】珈琲の世界史(旦部 幸博)|コーヒーの伝播、カフェのはじまりを深堀りした一冊
コーヒーの歴史といえば、カルディというヤギ飼いの少年の話が有名だ。ヤギが楽しそうに食べている赤い実を、カルディ自身も食べてみたら楽しい気分になり、ヤギと一緒に踊ったという話だ。あまりにも有名な話であり、筆者はこれがコーヒー発見の歴史だ... -
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【書評】『世界からコーヒーがなくなるまえに』|2080年にはコーヒーがなくなるかもしれない
2080年には、コーヒーが飲めなくなるかもしれない。もしくはコーヒーは、一部の金持ちだけが飲める超贅沢品になる。 そんな悲観的なシナリオを説くのが、コーヒーの環境問題、労働問題に焦点を当てた『世界からコーヒーがなくなるまえに』である。本書... -
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【書評】空腹について(雑賀恵子)|空腹に振り回される人間について
『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎は空腹を満たすときつかのまの幸福を得る。同じくグルメ漫画の『忘却のサチコ』の主人公、佐々木幸子は空腹を満たすとき、結婚式当日に自分のもとを去った婚約者、俊悟さんのことを忘れることができる。 『ドラゴンボ... -
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【書感】性食考(赤坂憲雄 著)|内容紹介・感想とゾンビの考察
食と性は奇妙につながる。 たとえば「食べる」という言葉には、2つの意味が存在する。1つは「パンを食べる」といった、文字通りの食べるという意味。もう1つは「性交する」という意味だ。たとえば「あの娘を食べたい」「あの人はこのサークルの男を食い散... -
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『食の社会学 パラドクスから考える』の書評と、食における人間の加害性について
ブラック労働に支えられている高級レストランの料理。食料の過剰と不足が同時に起こる社会。地球環境に配慮したオーガニックフードを作るために、重労働に強いられている人たち。 われわれ普段何気なくしている食には、数々の矛盾した側面が存在している。... -
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【要約】マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう』|正義とは何か?3つのアプローチから考える一冊
自分の家族が凶悪な犯罪に手を染めていた場合、通報するべきか、それとも目をつむるべきか。 第二次大戦中の非人道的的行為に対して、現代世代はその責任を負う義務があるのか。 人口妊娠中絶や同性婚は認められるべきか。 どう判断するのが正義なのだろう... -
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『寝ながら学べる構造主義(内田 樹)』を読んだ感想
これまで『はじめての構造主義(橋爪大三郎)』『レヴィ=ストロース入門(小田 亮)』など構造主義に関する本を読んだが、先の二冊と比較すると、『寝ながら学べる構造主義(内田 樹)』はとても読みやすい本であり、構造主義の入門書としては最適なのでは... -
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【書評】『エコ・ロゴス―存在と食について』(雑賀恵子 著)
『エコ・ロゴス―存在と食について(雑賀恵子)』とはいったい何なのか? タイトルからではまったく内容が想像できないが、ものすごく簡単にいえば、生命の循環から、人間の命、いまここにるわたしの命、その在り方を考えるエッセイだ。 あくまでエッセイと... -
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食糧問題解決のため「食の利他主義」とは?|『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか (ジャック・アタリ著)』より
2050年、人類は食えなくなるかもしれない。この悲観的な主張をするのが、欧州最高峰の知性と呼ばれるジャック・アタリだ。彼は『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか』のなかで次のように主張している。 今日の西側諸国と同じ消費モデルを持してよ... -
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閉鎖的な村と食人を生々しく描く漫画『ガンニバル(二宮正明)』の感想
ド田舎の超閉鎖的な村で、人知れず、人が人が食うという、ホラー要素満載のワクワクする漫画。それが『ガンニバル』である。 『約束のネバーランド』『鬼滅の刃』『東京喰種』『進撃の巨人』など、近年ヒットしたこれらの作品にはある共通点がある。それは... -
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肉・牛乳・米の礼賛と忌避を繰り返す日本人|『カリスマフード: 肉・乳・米と日本人(畑中三応子)』書評
「肉を食うと穢(けが)れる」と、肉を忌避する一方で「肉は健康にもよく、体格がよくなる」と礼賛する。 「牛乳を飲むと骨からカルシウムが溶け出す」というトンデモ言説が存在する一方で、「牛乳は完全栄養食である」という過剰な礼賛が存在する。 「日... -
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ポテトチップスの袋がうるさいのはなぜか?|『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実(チャールズスペンス)』の書評
なぜポテトチップスの袋はうるさいのか? あんなにもガサガサ音がする袋なのだろか? 実は、袋の音が大きければ大きいほど、ポテトチップスがサクサクしているように感じられるからだそうだ。 オックスフォード大学の学生のアマンダ・ウォンと行った研究を... -
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『チーズと文明(ポール・キンステッド)』の書評|チーズの歴史を世界史の中で読み解く一冊
日本でチーズを一般的に食べるようになったのは昭和になってからだ。チーズを食べるようになって日本人はまだ100年もたっていない。 当然、日本の伝統料理にチーズは登場しない。 一方で、ヨーロッパ、近東において、チーズは欠くことができない重要な食物... -
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ポストモダンの人間が動物化したとはどういうことか?|『動物化するポストモダン(東浩紀)』の書評
批評家であり哲学者である東浩紀の著書、『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』を読んだ。 『動物化するポストモダン』はポストモダンの、オタクたちの消費行動の変化を論じたうえで、それらの消費行動の変化は、社会に対してどのような影響... -
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【書評】『食べることの哲学(檜垣立哉)』|人間は動物を殺し、毒を食って生きる|
食べることとは、動物、植物を殺すことだ。殺すことはネガティブなものであるが、われわれ人間が生きるためは、そのネガティブなことをし続けなければいけない。 この食べることに関する矛盾を掘り下げてくれるのが、「食べることの哲学」だ。 本書の著者...
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