読書感想
コロナ禍は私たちの食を大きく変えた。飲食店は営業自粛の要請を受けた。外出自粛の要請や来日者の激減で閉店した店や、テイクアウトやデリバリー、通販のみに切り替える店も多くあった。自粛要請が解除された後でも営業時間の短縮や大人数での利用、アルコ…
食品、雑貨、家具から家電までなんでも揃っているチェーンストアのドン・キホーテには、「ドンペン」と呼ばれるペンギンのマスコットキャラクターがいます。 このマスコットキャラクターは店内のイラストに使われるだけでなく、店先の看板にも登場します。『…
肉を食べることは倫理的である。 ビーガンの存在が一般的に認知されるようになった昨今、動物の肉を食べることが非倫理的であるという主張はよく耳にする。しかしその真逆の主張である「肉を食べることが倫理的である」などという主張はめったに見かけない。…
はるか昔から米中心の食生活を送る日本人。そして肉とパンを食の中心に置いてきたヨーロッパ。この大きく異なる食生活の違いが、実は日本人とヨーロッパの人たちとの考え方や価値観に影響を与えている。 食べるものによって、醸成される思想が変わる。それを…
ペットとなる犬や猫に愛着を感じ、大量の犬や猫が日々殺処分される現実に強い反感を抱く一方で、日々、動物の肉を食べ、乳製品を消費し、動物園を楽しみ動物実験を黙認している。 生きるためには食べなければいけない。具合が悪い時は薬に頼らなければいけな…
カフェやレストランでは、ビーガンメニューが少しずつ見られるようになり、スーパーやコンビニでも大豆ミートやプラントベースチーズといった言葉をみかけるようになった。そして肉を食べることを止める人、肉を食べる機会を止める人が増えている。これは「…
多くの動物を苦痛から開放し、環境問題や食糧問題解決の糸口になるかもしれない食べ物が存在する。一方でその食べ物は試験管のなかで作られた極めて人工的な食べ物だ。それが培養肉である。 この不思議な食べ物を私たちは受け入れることができるのか。『クリ…
『鬼滅の刃』を最終巻まで読んだのだが、本作は文系VS理系のような構造があるように思える。 ちなみにこの文章はネタバレを含む。また『鬼滅の刃』のストーリーや登場人物の属性などをある程度把握している前提で展開していくので留意いただきたい。 生物的…
人を神の食べ物として犠牲にすることを人身御供といい、それを語る物語のことを人身御供譚という。日本には、この人身御供譚を付帯している祭が無数に存在している。尾張国府宮の「儺追祭」や山形県の椙尾神社の「大山犬まつり」などあげればキリがないが、…
ナポリタン、オムライス、ハヤシライス、焼きそば、メロパン、ショートケーキなど、現在日本で定番になっている料理は、どこの誰が、いつ考案したものなのか。そのルーツを探ったのが『オムライスの秘密 メロンパンの謎: 人気メニュー誕生ものがたり』(澁川…
人間はいつから食後にデザートを食べるようになったのだろうか。 今では甘いものは時間を問わずいつでも食べる。朝食代わりにスイーツを食べたり、朝食と昼食の間や、昼食と夕食の間、そして夜食などあらゆる場面で甘いものを食べる機会がある。一方で「食後…
東京はミシュランで星の数がもっとも多い都市であり、また日本は世界主要32国のなかで飲食店の数がダントツで多い国である。なぜ日本はこれほどまでにグルメな国なのか。その秘密を解き明かすとともに、懐石や居酒屋、やきとりから天ぷらといった和食から、…
身体は食べたものからできている。だから食べることは健康と密接につながっている。近代の日本人がビタミンB1の不足で脚気に苦しみ、ヨーロッパの人々がビタミンC不足で壊血病で苦しんだように、食事の偏りは病気の原因となる。食べものは健康にとって非常に…
「健康第一」という言葉があるが、本当に健康は生きるうえでもっとも大切なものなのだろうか。たしかに健康は大切だ。病気になれば少なからず苦痛に襲われるし、通院や入院でお金と時間が失われる。健康的な生活で不死身になれるわけではないが、それでも健…
多様であることは、あらゆる場面でよしとされる。食の世界でも同様だ。牛丼やハンバーガー、蕎麦や寿司だけでなく、中華もエスニックもフレンチもイタリアンも、ありとあらゆる選択肢があることは良いことだと当たり前のように思っている。しかし、経済格差…
肉や乳製品の生産が地球環境に大きな負荷を与えており、肉や乳製品をやめれば環境問題が解決する。しかし環境団体や政府はなぜかその事実に一切言及しない。そんな衝撃的な事実を突きつけるのが、Netflixで配信されている『Cowspiracy:サステイナビリティ(…
中国やインド、シンガポール、台湾、韓国などアジアの国々の存在感が増す昨今であるが、それでも依然としてヨーロッパとアメリカやカナダなどのヨーロッパを起源とする地域に、多くの富と権力が集まっている。なぜ富や権力は、アフリカや東南アジア、南米に…
「フードテック革命に日本不在」そんな嘆きからはじまるのが、本記事で紹介する『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』である。 フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義作者:田中宏隆,岡田亜希子,瀬川明秀日経B…
日本で最初の喫茶店は、1888年に鄭永慶(ていえいけい)が開いた「可否茶館」だといわれている。これ以降、日本には様々なカフェが生まれてきた。 純粋にコーヒーを楽しむカフェから、音楽を聴くため名曲喫茶、メイドさんが接客してくれるカフェ、そして昭和…
いまでこそ簡単に手に入る香辛料であるが、世界で流通するようになって間もないころは、まだまだ希少であり、また「万能の薬」として重宝されていた。そんな香辛料は、貴重であるがゆえに、供給を制限することで領民を支配するための道具として、また富や権…
日本でも人気の焼き菓子である「フィナンシェ」。実は「フィナンシェ」という言葉は「金融家」を意味する。焼き菓子なのになぜ金融家なのか。実は、パリの証券取引所の近くで店を開いた菓子職人ラヌが、フィナンシェ(金融家)たちが、背広を汚さずに手軽に…
「環境保護は重要である」 私たちはこの考えを何の疑いもなく支持している。しかしその考えが実は、豊かな国に住むある程度裕福な人間がもつ、身勝手な考えにすぎないのだとしたら……。 そんなスリリングな主張をするが『新しい目の旅立ち』という一冊である…
ここ最近スターバックスが増えることについて少し違和感があり、スターバックスについて調べているのだが、その過程で必ず目にするのが「サードプレイス」という言葉である。 サードプレイス――コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」作者:レイ・…
『お望みなのはコーヒーですか?』は、日本語化されている本のなかでは数少ないスターバックスを批判的に論じた本である。 しかもその内容は「意識高い系が嫌い」や「気取った雰囲気が嫌い」といった感情的な批判ではなく、取材と文献にもとづいた社会学的な…
コーヒーの歴史といえば、カルディというヤギ飼いの少年の話が有名だ。ヤギが楽しそうに食べている赤い実を、カルディ自身も食べてみたら楽しい気分になり、ヤギと一緒に踊ったという話だ。あまりにも有名な話であり、筆者はこれがコーヒー発見の歴史だと当…
2080年には、コーヒーが飲めなくなるかもしれない。もしくはコーヒーは、一部の金持ちだけが飲める超贅沢品になる。 そんな悲観的なシナリオを説くのが、コーヒーの環境問題、労働問題に焦点を当てた『世界からコーヒーがなくなるまえに』である。本書は、コ…
『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎は空腹を満たすときつかのまの幸福を得る。同じくグルメ漫画の『忘却のサチコ』の主人公、佐々木幸子は空腹を満たすとき、結婚式当日に自分のもとを去った婚約者、俊悟さんのことを忘れることができる。 『ドラゴンボー…
食と性は奇妙につながる。 たとえば「食べる」という言葉には、2つの意味が存在する。1つは「パンを食べる」といった、文字通りの食べるという意味。もう1つは「性交する」という意味だ。たとえば「あの娘を食べたい」「あの人はこのサークルの男を食い散ら…
ブラック労働に支えられている高級レストランの料理。食料の過剰と不足が同時に起こる社会。地球環境に配慮したオーガニックフードを作るために、重労働に強いられている人たち。 われわれ普段何気なくしている食には、数々の矛盾した側面が存在している。 3…
自分の家族が凶悪な犯罪に手を染めていた場合、通報するべきか、それとも目をつむるべきか。 第二次大戦中の非人道的的行為に対して、現代世代はその責任を負う義務があるのか。 人口妊娠中絶や同性婚は認められるべきか。 どう判断するのが正義なのだろうか…