食文

食文化・消費文化考察や書評など

【書評】『コーヒーと日本人の文化誌(メリー・ホワイト著)』アメリカの文化人類学者がカフェと日本人、カフェと日本都市を考察した一冊

日本で最初の喫茶店は、1888年に鄭永慶(ていえいけい)が開いた「可否茶館」だといわれている。これ以降、日本には様々なカフェが生まれてきた。 純粋にコーヒーを楽しむカフェから、音楽を聴くため名曲喫茶、メイドさんが接客してくれるカフェ、そして昭和…

『「食べること」の進化史(石川伸一)』の書評と個別化食について

いまでこそ簡単に手に入る香辛料であるが、世界で流通するようになって間もないころは、まだまだ希少であり、また「万能の薬」として重宝されていた。そんな香辛料は、貴重であるがゆえに、供給を制限することで領民を支配するための道具として、また富や権…

なぜ完全食が生まれたのか? 完全食がわたしたちにもたらしたものとは?

健康を維持にするために必要な栄養素がすべて入っている食べもの完全食、もしくは完全栄養食が注目されている。 一昔前まで完全食といえば、卵や玄米、その他や肉、野菜、炭水化物がバランス良く入っている食材や料理そのものを指した。一方、最近の完全食と…

なぜミルクレープはチェーン店でしか見かけないのか? ミルクレープの特殊性とミルクレープの歴史について

ミルクレープはチェーン店でよく見られる一方、個人の洋菓子屋やカフェでは見られない特殊なケーキである。 ご存知のとおりミルクレープは、クレープ生地を重ねてケーキ状にしたスイーツだ。不二家、シャトレーゼといった定番のケーキ屋ではもちろんのこと、…

フランス菓子の歴史と命名法がわかる一冊『名前が語るお菓子の歴史』|私たちは100年以上も前に考案された価値を食べ続けている

日本でも人気の焼き菓子である「フィナンシェ」。実は「フィナンシェ」という言葉は「金融家」を意味する。焼き菓子なのになぜ金融家なのか。実は、パリの証券取引所の近くで店を開いた菓子職人ラヌが、フィナンシェ(金融家)たちが、背広を汚さずに手軽に…

【安価、快適、便利なマクドナルド】社会的な場所としてのマクドナルドについて

マニュアル化、合理化のために人間性を排除した資本主義の権化として、ジャンクフードの代表格として、一部の人から忌み嫌われるファーストフードチェーン「マクドナルド」。 しかしマクドナルドが提供しているその空間を見てみると、インフラの充実度に驚か…

図書館とスターバックスが隣り合わせになった複合施設「エトモ池上(2021年4月オープン)」を訪問しての雑感

2021年の4月に東急池上線・池上駅がリニューアルし、複合施設であるエトモ池上が完成した。この建物の4階にはスターバックスがあるのだが、それと隣り合うようにして図書館がある。 スターバックス池上店の写真、隣に図書館がある スターバックスと図書館が…

【書評】新しい目の旅立ち(プラープダー・ユン)|汎神論とスピノザの哲学と自然に特別な意味を見出す思想

「環境保護は重要である」 私たちはこの考えを何の疑いもなく支持している。しかしその考えが実は、豊かな国に住むある程度裕福な人間がもつ、身勝手な考えにすぎないのだとしたら……。 そんなスリリングな主張をするが『新しい目の旅立ち』という一冊である…

サードプレイスとは何か?|レイ・オルデンバーグ『サードプレイスーコミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』の書評とサードプレイスの特徴など

ここ最近スターバックスが増えることについて少し違和感があり、スターバックスについて調べているのだが、その過程で必ず目にするのが「サードプレイス」という言葉だ。 「スターバックスの人気の秘密はサードプレイスを提供したことにある」と説明されるこ…

【書評】お望みなのはコーヒーですか?(ブライアン・サイモン 著)|スタバの批判的考察から消費社会を考える一冊

『お望みなのはコーヒーですか?』は、日本語化されている本のなかでは数少ないスターバックスを批判的に論じた本である。 お望みなのは、コーヒーですか?――スターバックスからアメリカを知る作者:ブライアン・サイモン発売日: 2013/04/10メディア: 単行本(…

スタバのテーマパーク「スターバックスリザーブロースタリー東京」はどんな場所か?|特徴、従来店との違いなど

このブログでは、日本最大のカフェチェーンであるスターバックスについて、その影響力が強まることの是非をあれこれ考察している。 当ブログの調査対象であるスターバックスは、2019年に一風変わった店舗を東京中目黒にオープンした。それが「スターバックス…

スターバックスの歴史と年表|シアトルでの誕生から日本上陸、リザーブロースタリーがオープンするまで

このブログではスターバックスの存在の是非について考察を試みている(スターバックス考)。その1つとしては今回はスターバックスの歴史をまとめることにした。 日本の話と海外での話が混在しているため、わかりづらい部分もあるかもしれないが、参考になれ…

【書評】珈琲の世界史(旦部 幸博)|コーヒーの伝播、カフェのはじまりを深堀りした一冊

コーヒーの歴史といえば、カルディというヤギ飼いの少年の話が有名だ。ヤギが楽しそうに食べている赤い実を、カルディ自身も食べてみたら楽しい気分になり、ヤギと一緒に踊ったという話だ。あまりにも有名な話であり、筆者はこれがコーヒー発見の歴史だと当…

【スタバは排他的】スターバックスが持つ排他性とスタバの人気の秘密

スターバックスは排他的なカフェである。 これは別にスタバを批判しているわけではない。またスタバは公然と人を排除しているわけではない。 スタバはそのコンセプトとそこに集まる人たちによって、自然と排他性をおびたカフェになっているということだ。フ…

【書評】『世界からコーヒーがなくなるまえに』|2080年にはコーヒーがなくなるかもしれない

2080年には、コーヒーが飲めなくなるかもしれない。もしくはコーヒーは、一部の金持ちだけが飲める超贅沢品になる。 そんな悲観的なシナリオを説くのが、コーヒーの環境問題、労働問題に焦点を当てた『世界からコーヒーがなくなるまえに』である。本書は、コ…

スターバックスの取り組み、特徴まとめ|スタバは非の打ち所がない素晴らしい企業なのか?

スタバがどんどん増えている。その勢いは今でも衰えることなく、店舗数はチェーンカフェのなかでぶっちぎりの1位だ。 しかしスタバが日本で増えることについて、どうも違和感を感じてしまう。しかしその違和感をうまく言語化することができない。ひとまずス…

【書評】空腹について(雑賀恵子)|空腹に振り回される人間について

『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎は空腹を満たすときつかのまの幸福を得る。同じくグルメ漫画の『忘却のサチコ』の主人公、佐々木幸子は空腹を満たすとき、結婚式当日に自分のもとを去った婚約者、俊悟さんのことを忘れることができる。 『ドラゴンボー…

母乳を飲むこととカニバリズムの関連性|多くの人間はカニバリズムを経て成長する

人間における最大のタブーといえばカニバリズム、すなわち人間を食べることだ。死んだ人間であっても無論、たとえ餓死の危機に瀕しているとしても、現代においてカニバリズムは絶対に許されない行為ということになっている。 一方で実は、多くの人間がカニバ…

【書感】性食考(赤坂憲雄 著)|内容紹介・感想とゾンビの考察

食と性は奇妙につながる。 たとえば「食べる」という言葉には、2つの意味が存在する。1つは「パンを食べる」といった、文字通りの食べるという意味。もう1つは「性交する」という意味だ。たとえば「あの娘を食べたい」「あの人はこのサークルの男を食い散ら…

スターバックの店舗が増えることに感じる違和感

スタバが増えている。スタバが雨後の筍のようにオープンするのは今に始まったことではない。 しかしスタバがあちこちにできる現象に対して、どうにも違和感を覚えてしまう。決してスタバを嫌っているわけではないのだが、どうにも増えるすぎることには、違和…

【書評】『食の社会学 パラドクスから考える』の書評と食における人間の加害性について

ブラック労働に支えられている高級レストランの料理。食料の過剰と不足が同時に起こる社会。地球環境に配慮したオーガニックフードを作るために、重労働に強いられている人たち。 われわれ普段何気なくしている食には、数々の矛盾した側面が存在している。 3…

【要約】マイケル・サンデル著『これからの「正義」の話をしよう』|正義とは何か?3つのアプローチから考える一冊

自分の家族が凶悪な犯罪に手を染めていた場合、通報するべきか、それとも目をつむるべきか。 第二次大戦中の非人道的的行為に対して、現代世代はその責任を負う義務があるのか。 人口妊娠中絶や同性婚は認められるべきか。 どう判断するのが正義なのだろうか…

マルクス・ガブリエルの「世界は存在しない」とはどういうことか?

最近、国内外で話題の哲学者としてマルクス・ガブリエルという人がいる。 マルクスガブリエルはドイツの哲学者でありボン大学の教授を務めており、日本のテレビ番組も度々登場する。彼の経歴は検索すれば簡単に調べられるので割愛するが、とにかくマルクス・…

有用性が不明確なものにこそ国は税金を投じるべきであり、また社会はそれを許容すべき

国はどんな学問分野に税金を投じるべきだろうか。大きく分ける2つあると思う。 1つは、人類にとって役立つと明確にわかる分野に投資すること。宇宙開発や最先端医療、環境問題対策などがそれに当たるだろう。研究が進めば、生活が便利になったり、社会問題を…

『寝ながら学べる構造主義(内田 樹)』の解説と感想

これまで『はじめての構造主義(橋爪大三郎)』『レヴィ=ストロース入門(小田 亮)』など構造主義に関する本を読んだが、先の二冊と比較すると、『寝ながら学べる構造主義(内田 樹)』はとても読みやすい本であり、構造主義の入門書としては最適なのではな…

【書評】雑賀恵子著『エコ・ロゴス―存在と食について』

『エコ・ロゴス―存在と食について(雑賀恵子)』とはいったい何なのか? タイトルからではまったく内容が想像できないが、ものすごく簡単にいえば、生命の循環から、人間の命、いまここにるわたしの命、その在り方を考えるエッセイだ。 あくまでエッセイとい…

リニューアル後の宮下パークで感じた肯定的感情と否定的感情

渋谷の宮下パークがオープンした。 宮下パークとは東京都渋谷区にある、複合商業施設のことだ。以前は宮下公園があった土地が、渋谷の再開発計画とともにリニューアル。 宮下パークは3階建てで、ブランドショップや飲食店が入った商業施設と、その屋上に宮下…

『コロナ危機の社会学 感染したのはウイルスか、不安か (西田亮介)』内容紹介と感想

2019年末から中国の武漢市で確認されはじめた新型コロナウイルスは、またたく間に世界に広がった。中国でウイルスが確認されてからすでに半年以上が経過しているが、今だに沈静化する様子はない。 日本においては緊急事態宣言が解除され、学校も再開した。飲…

食糧問題解決のため「食の利他主義」とは?|『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか (ジャック・アタリ著)』より

2050年、人類は食えなくなるかもしれない。この悲観的な主張をするのが、欧州最高峰の知性と呼ばれるジャック・アタリだ。彼は『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか』のなかで次のように主張している。 今日の西側諸国と同じ消費モデルを持してより…

日本人はなぜ最近まで牛乳・乳製品を食べなかったのか?

チーズやヨーグルト、バター、そして牛乳。乳製品は現在の日本の食卓には欠かせないものになっている。 しかし日本人が日常的に牛乳を飲み、乳製品を食べる最近になってからだ。また日本の伝統料理を振り返ると、乳製品を使った料理、菓子は皆無だ。(創作系…